奈良名物「お菓子部門」の代表格。ちょっと「お高い」し、どこにでも売っているわけでもなく、観光客にはちょっと縁遠い感じですが、歴史もあって由緒正しい銘菓です。
シンプルで上品な、お茶席向け「高級落雁」
青丹よし(あおによし)は、「寒梅粉」という米粉と、最高級砂糖・和三盆(わさんぼん)を混ぜて固めて、短冊形に切った落雁(らくがん)の一種。緑とピンクの2色なのはどこのお店でも一緒ですが、粉砂糖で雲を描いたような模様が入っていたり、「青丹よし」という字が浮き彫りになっていたり、デザインはお店によってオリジナリティーがあります。
砂糖と米粉を使った「落雁」だけあって、味はとにかくシンプルでお上品。口に入れると溶けるような感じで、高級砂糖として有名な和三盆糖の上品な甘さが口に広がります。おもしろい風味があるとか、あんこがたっぷり入っているとか、そういうインパクトとは無縁で、とにかく上品なのがウリ。お菓子そのものを味わうためのものじゃなくて、お茶の席で出すお茶菓子用ですね。
奈良らしいネーミング
「青丹よし」という名前は、奈良を表す枕詞(まくらことば)から来ていて、
「青丹よし奈良の都は咲く花の匂うが如く今盛りなり」
という歌が万葉集にあります。万葉の香り漂うネーミングと言えそうですね。そう考えると、奈良らしいおみやげに思えてきて、買って帰りたくなりますが、なにぶん「高級和菓子」だけあってお高いのが難点。小さな板状のお菓子ですが、お店によって差があるものの、1枚あたりだいたい150~200円くらいします。ちょっと勇気が要りますね。
有名な有栖川宮が命名
もともとは「真砂糖(まさごとう)」という名前で、色もまっ白だったとか。法隆寺や中宮寺の御用達だったという、由緒正しいお菓子です。江戸時代に、有栖川宮が中宮寺に泊まったとき、真砂糖を食べて気にいって、奈良の枕詞から「青丹よし」と命名して、色も淡青と淡紅(=丹)にするといい、と提案して、今の名前と色になったそうです。
奈良の歴史を秘めたネーミングと、古都らしく「やんごとなき」エピソードを持った銘菓、青丹よし。フンイキといい、値段といい、ふつうの旅行者にはなかなか手を出しにくいところですが、お抹茶をやっているような人には、お茶菓子におすすめできる奈良みやげです。