奈良の町を歩いていると、ときどき見かける古い建物の太い格子。奈良格子とか法蓮格子(ほうれんごうし)といって、奈良の町並みを楽しむうえで重要なキーワードです。
奈良格子・法蓮格子とは?
奈良格子・法蓮格子というのは、杉の丸太をタテに半分にしたものを、窓のところやサクに並べて打ちつけた格子。断面が半円形なもののほか、四角い場合もあります。古い建物の格子というと、京都の千本格子が有名で、似たようなものは関西を中心に、西日本エリアのかなり広い範囲の古い町並みで見かけます。奈良格子はそれよりずっと太くて間隔も広い格子で、名前のとおり奈良独特のものです。
法蓮格子という呼び名は、近鉄奈良駅から北のほうへ行ったところにある法蓮町から来ています。法蓮町にある農家は、ほとんどが法蓮格子の家だったとか。今はほとんど見かけなくなって残念ですが、名残りは残っているようです。古い町並みが残っているならまちのところどころで見られるのと、他でも名所ではないふつうの裏通りで不意に見かけたりするので、探しながら歩くのも楽しそうですね。
由来は奈良名物・シカ
なんで奈良格子みたいなものができたかといえば、奈良名物・シカと関係があります。昔は車なんか走っていなかったので、今よりずっと広く、奈良の町中までシカが自由に行き来していました。
今は奈良公園の鹿苑でやっている「鹿の角切り」も、江戸時代には町中でやっていたとか。そこで、シカが暴れても、家も守れるしシカも傷つけない方法として、奈良格子が編みだされたようです。なにせ、シカを殺したりすると死刑になった時代ですからね。奈良格子は、奈良の歴史や文化、特にシカと深くかかわった、地域性のかたまりみたいなものといえるでしょう。
シカ対策だけじゃない
奈良格子の存在意義は、なにもシカ対策だけじゃありません。外から中は見えにくく、中から外はよく見える性質があって、今でいうレースのカーテンのような役割もあります。この効果を体感するには、ならまちにある「ならまち格子の家」に行くのがおすすめ。復元した町家に上がれて、しかも入場無料です。